祖父の手紙

春の嵐か、夜半から強風が吹いています。

 

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思いがけずたどり着いた祖母の本家。

 

暫くするとお嫁さんが、古い手紙を持ってきてくれた。

何と祖父、くどいようだが説明すると父の父、からの手紙だった。

 

祖母の失踪直後、祖父が本家に当てて書いたもので、当時の状況や心境が書いてあった。

当時の失踪が掲載されている新聞のコピーも同封されていた。

 

「この度❍❍の家出によって、皆様方にも大変御心配をお掛けしておりますこと、大変心苦しく思っております。

❍❍は数年前から入院の繰り返しで、寂しい日々をおくっていたようです。…」

この後、祖父は茨❍まで訪ねてきたそうだ。

 

本家のほうでは、この手紙を仏壇に入れて保管。

それを何年も後にお嫁さんがやってきて、たまたま見かけておじいさんに尋ねた。

昔そんなことがあったらしいと聞いていたが、今回この手紙のことを思い出し、持ってきて下さったということ。

 

手紙は私が引き取ることになった。

 

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その日はもう夕方になっていて、家の人が勧めてくれるままに、本家に一泊することに。

「いきなり訪ねてきた、見知らぬ人なのに良いのですか?」と聞くと

「いや、もうその顔で親族だよ」と。

 

顔パス…?

 

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結局のところ、本家の方でも祖母の行方は把握していないということだった。

分かったとしても、生きてれば今年101歳だから、絶望的なんだけど。

それでも、こうやって親族に会うことが出来ただけでも収穫。

 

翌日は付近をおじいさんに案内してもらった。

 

何十年も前、祖母はこの辺りを歩いて、遊んでいたのだろうな。

 

75歳で家出して、どうやったら何の痕跡もなく失踪できたのか。

どんな気持ちで最期を迎えたんだろう。

 

戸籍上では死亡届が出されないまま、職権削除(現住所不明)。

名前は同戸籍上で、ただ一人残され続けている。

 

25年も立ってしまったけれど、探してくれる誰かがいると知ったら、祖母の最期も少しは慰めがあるだろうか。

 

出来たら除籍手続きをして、祖母の戸籍上の人生もきちんと閉じてあげられたら、と思っている。

 

地上を魂がさまようなんて思っていないけど、

戸籍を閉じることによってようやく祖母の行方不明の人生が終わり、

 

どこか、違う世界に旅立つことが出来る…ような気がするから。