ご家族 -ライオンさんのこと 12
忘れない内に、と思って急いで一連のことを書いてみたけれど、帰ってくると無性に疲れる。
動くのが億劫でたまらない。
かと言って、休むのは恐い。
嫌な気持ちになりそうだから。
だから、ダラダラでもいいから、できる事をしていようと思っている。
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部屋に帰ってくると、
「遅かったね、どこ行ってたの」とTさんに言われた。
「電話かけてたんだよ、ごめんね。」
「遅いのは、いいことじゃないって話してたんだよ。
何かあったのかな、って。」
と、息子さん。
「あはは…すみません」
まだ外は明るかった。
でも、長崎に居られるのはあと3時間ほどだ。
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ライオンさんのご家族は本当に快く私を受け入れて下さった。
お会いしたのは10年も前、お正月にちらりとお会いしただけだった。
遠慮もあって、その時私は隠れるようにしていた。
当時小学生だったお孫さんのKくんと相撲をとって遊んだ。
歯が抜けた顔でニコニコ笑ってくれた。
お姉さんのAさんは、すっかり大人になっていて、可愛らしい娘さんになっていた。
10年も前、ちらっとお会いしただけなのに、二人共私のことを覚えてくれていた。
「びっくりしたから」とはK君談。
軽い夕食を囲みながら、色々な話をした。
こんな風にお話できる日が来るなんて思わなかった、
ずっと、ライオンさんとTさんにお世話になりながら、ご家族にお礼が言えなくて気になっていた。
それが今、こうやってひとつ食卓を囲んで、楽しく話をしている。
この光景を見てくれたら、ライオンさんきっと喜んだのに。
どうして死んでしまったんだろう。
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出発しなければいけない時間がやってきた。
お孫さんのAさんと、Kくんが送ってくれることになった。
こんな風にして頂けるなんて、本当に嬉しかった。
2人が荷物を持ってくれた。
今Aさんは社会人に、Kくんは高校3年生になっていた。
エレベーターの中で2人に話した。
「お父さんが、おじいちゃんの選択を尊重しようね、って言われたそうだけど、私もそう思うよ。
どうして、って今でも思うけど、それがおじいちゃんの意志なのだから、大事にしよう。」
Aさんが、頷いた。
「2人は、元気でいなきゃ。幸せにならないといけないよ。」
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バスのりばに着くと、他教会員のSさんが駆けつけてくれた。
車内で食べる色々なものを持ってきてくださった。
バス到着間際に、勇気を出してお孫さんたちに連絡先を交換出来ないか聞いてみた。
快く了解してくれて、操作がおぼつかない私とSさんに代わってKくんが速やかにLINEを登録してくれた。
3人に手を振って車内に乗り込んだ。
Tさんを1人長崎に残すことが心配だった。
沢山の人が近くにいてくれるのだが…何もかも飲み込んで発つしか無い。
夜行バスの窓にはすべてカーテンが下がっていて、外は見えなかった。
バスは予定時刻を少し遅れて出発した。
クタクタだったが、必要と思われる人に連絡した。
明日は、伝道会の当務だ。