火葬 -ライオンさんのこと 9

葬儀には多くの関係者が駆けつけてくれた。

Tさんの事を思い、ずっと付き添ってくれた旧知の方々も居た。

教会関係者でない人たちも居た。

このような、沢山の方々の優しさが目に見えるようだった。

 

斎場を後にした。

長崎の火葬場に行くのは初めてである。

 

到着まで長くかかってくれたらいいと思った。

ライオンさんが焼かれてしまう。

骨になってしまう。

 

昨日の今日の、何だかしんみりする暇もない。

 

*********

 

期待は見事に裏切られ、斎場まで15分くらいだった。

 

バスを降りたら、建物のすぐ奥に火葬のための釜が見えた。

 

もう数メートルしか無い。

そんな。

 

残されている時間も、距離もこれだけしか無いのか。

 

降ろされた棺は、火葬場の入り口のホールに速やかに運ばれた。

牧師が呼ばれ、火葬の前のお祈りが取り次がれた。

 

そしてすぐに釜の前に運ばれていった。

関係者がぞろぞろと棺の後を追う。

 

釜の中は真っ暗だった。

 

「(どうして)」と思った。

 

もう、焼かれてしまうのか、

もう少し、待ってもらえないのか。

どうして、

一体どうして。

 

係員が遺族の方を振り向いて、短く礼をするとまた棺の方に向き直り、

二人がかりで棺を釜に入れた。

 

白木の棺が目の前をあっという間に通り過ぎていった。

 

「(どうして)」

釜の中を覗き込みながら思った。

「(どうしてこんなに死に急ぐ必要があったんだ!)」

 

少しでも長く棺を見ていたかった。

閉じられていく釜の扉の隙間を、腰をかがめて見ていた。