火葬 -ライオンさんのこと 9
葬儀には多くの関係者が駆けつけてくれた。
Tさんの事を思い、ずっと付き添ってくれた旧知の方々も居た。
教会関係者でない人たちも居た。
このような、沢山の方々の優しさが目に見えるようだった。
斎場を後にした。
長崎の火葬場に行くのは初めてである。
到着まで長くかかってくれたらいいと思った。
ライオンさんが焼かれてしまう。
骨になってしまう。
昨日の今日の、何だかしんみりする暇もない。
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期待は見事に裏切られ、斎場まで15分くらいだった。
バスを降りたら、建物のすぐ奥に火葬のための釜が見えた。
もう数メートルしか無い。
そんな。
残されている時間も、距離もこれだけしか無いのか。
降ろされた棺は、火葬場の入り口のホールに速やかに運ばれた。
牧師が呼ばれ、火葬の前のお祈りが取り次がれた。
そしてすぐに釜の前に運ばれていった。
関係者がぞろぞろと棺の後を追う。
釜の中は真っ暗だった。
「(どうして)」と思った。
もう、焼かれてしまうのか、
もう少し、待ってもらえないのか。
どうして、
一体どうして。
係員が遺族の方を振り向いて、短く礼をするとまた棺の方に向き直り、
二人がかりで棺を釜に入れた。
白木の棺が目の前をあっという間に通り過ぎていった。
「(どうして)」
釜の中を覗き込みながら思った。
「(どうしてこんなに死に急ぐ必要があったんだ!)」
少しでも長く棺を見ていたかった。
閉じられていく釜の扉の隙間を、腰をかがめて見ていた。