Mさんと -ライオンさんのこと 6
遺族控室を後にして、前夜式の準備をする前にMさんと行動を共にした。
ライオンさんの遺体を検査した病院へ遺体診断書を取りに行き、精算をする必要があるとのことだった。
自分の荷物をマンションに置いてきてしまったので、ついでで車に載せてもらった。
Mさんとゆっくり話をするのも久しぶりだった。
病院に着くと、Mさんが代金を支払い、私が領収書を受け取った。
遺体何とか、と書かれた領収書だった。
Mさんは医師からもう少し詳しい説明を受けていた。
私が荷物を取りに行く間、Mさんは警察へ診断書を持っていった。
マンションへ上がった。
階下を覗きながら、一体どこに転落したのか探した。しかし、何事もなかったようにどこも変哲もなかった。
荷物と必要な物を取り、Mさんから連絡が来てすぐに斎場へ折り返した。
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Mさんは葬儀の責任者なので、終始受付に待機してくださっていた。
たまたま夜勤が重なり、ずっと居られるということだった。
それも、神さまの憐れみだと、感謝した。
受付に座って話をした。
これまでのこと、最近のこと…。
聞けばMさんも、つい数カ月前に鬱になりかけ、調子が悪かった、と話した。
「頭はすごい冷静なの。
冷静なんだけど、方向性がおかしいの。
どうやったら死ねるのかなーって事ばかり、ぐるぐる考えるとさ。」
「それで、どうしたの!?」
「それがさ、私の場合は薬が合ったの。
お医者さんって、やっぱりすごかとね。
薬できれいに治ったとよ。」
「よかったねーー。」
「でもさ、あの病気はやっぱり恐いよ。
本当に病気さね。自分の意志が効かなくなるの。
だから、ご主人も、何かそげかとだったんじゃないかな。」
「ですねぇ…。」
(沈黙)
「でもさ、私思うとさね、ご主人武士みたいな最後だったよね。」
「あぁ…家は本当に武家だったって言ってましたよ。」
「そう、だって自分でこう、と決めて、ばさっと逝ってしまったんだから。
まるで、武士の切腹ばい。」
「そうですね。ライオンさんらしいと言えば、ライオンさんらしいです。
いつもどっちが先に逝くかって、話してたし。」
「ねぇ」
「はい…」
(沈黙)