壊れた時計 ―ライオンさんのこと 21

終わってないんですよ、このシリーズ、はは。

ライオンさんが突然この地を去ってから、3ヶ月が過ぎた。

奥さんのTさんは、電話で聞く声から、少しずつ前進している様子が伝わる。

一生懸命、前に進もうとしている。

そして、私は、Tさんの声を聞きながら、良かった、と思う。

では、自分の心情としてどうなのか、と言うと、実は何も進んでいない。

Tさんが、こんなに一生懸命生きているのに、実は自分はライオンさんのこと、について心の中で鍵をかけている。

まるで、壊れた時計のように、あの日から何もかもが止まっている、そういう心の部分がある。

その場所の扉を開けると、エライ顔をした化け物が座っているような気がしている。

怒りとか、やるせなさとか、悲しさとか、

そういう化け物の石像がこちらに背を向けてじっと座っている。

そのお化けを起こさないように、急いでドアを閉めて鍵をかけておく。

同じ出来事でも、関係性によって、感じるものは違ってくるのかもしれない。

あの日から、私の時計はまだ動かない。