ウイスキーボンボン-ライオンさんのこと 26

ライオンさんは、ウイスキーボンボンが好きだった。

下戸なのに。

それも、昔からあるモロゾフのウイスキーボンボンが好きで、バレンタインデーになると、これを買って、少しづつ食べていた。

今年もバレンタインデーがやってきた。

色とりどりのチョコレートを見るだけでも楽しみだったが、今年はライオンさんのことを思い出して、信じられないほど辛い光景になった。

 

ある年から、奥さんのTさんに頼まれて、ライオンさんにチョコレートをプレゼントしていた。

もう、あげようにも、あげられない。大好きなウイスキーボンボンも、あげることもできない。

無意識にも、見ないように、考えないように動きまわる内に、バレンタインデーが終わってしまった。

こんなに短いバレンタインデーは初めてだった。