夢 -ライオンさんのこと 28
夢を見た。
願望が見せたのか分からないが書き留めておこうと思う。
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歌を歌っていた。
小さなアパートで、知り合いの先生たちがいた。
葬儀だった。
前夜式からずっと終わり、最後の歌だった。
来ていた、そう多くない方々を見送って帰ると、ライオンさんを棺に入れるところだった。
ライオンさんはいつもの夏物の薄水色の部屋着だった。
あまりにもあっけなく進む葬儀で、私は戸惑いを覚えていた。
せめて、心を表そうと、一生懸命歌っていたようだった。
ライオンさんを見ると右手が担架?から出て曲がってしまっている。
「あぁ、ライオンさん手が出てしまってるね、直そうね。」
そう言って手を掴むと、もう死後数日立っているから冷たくて硬いのかと思ったら、
まだ柔らかくて暖かかった。
変だな?と思いながらも、頭の方に回り、ライオンさんを棺に入れるのを手伝おうとした。
持ち上げて、まだ残されている肉体を見ると、
「どうしてだよ」と、いつもの無念な気持ちが心をよぎった。
私は頭側にいるので、少し覗きこむようにな姿勢になっていた。
その時、ライオンさんの左目が、少し動くと、開いてこちらを見て私にウインクした。
私はびっくりした。
(多分、他の人から見るとホラー映画だと思うのだが、不思議なもので、生きていて欲しいと願う者にとっては、どんな状態でも喜び以外のなにものでもない。)
急いで頭側から右手の方にもう一度回り、顔をのぞき込んだ。
お世辞にも、肉体は良い状態とはいえず、目は形を失いつつあったが、
絶対に意識がある状態で、ライオンさんは目を開けようと頑張っていた。
その目で、私を見ていた。
「どうして!?」(これは、死んでなかったのか、これは一体全体どうしたんだ!?の「どうして」)
葬儀の間中、分かってたの?と思った。
その時、「生きてるよ」と頭のなかで声がした。
ライオンさんの声だった。
「??どうして、一体どうして!?」
もう本当に嬉しくて、生きてるんだ、死んでない、嬉しい、でも、えっ、これ、どんな状態?どうすんの?どうする!?医療機関どうしてくれる!?
と頭の中が大パニック。
その時、ライオンさんが口を開いて何か言おうとした。
でも、声にならなかった。か細いうめき声のようなものが耳に聞こえ、
そこで目が覚めた。
夢だった。朝の5時過ぎ。
心臓がドキドキしていた。
「生きてるよ」…。
私にウインクしたライオンさんは、かつてのように茶目っ気があり、いたずら好きな、あの様子だった。
起きてびっくりして、お祈りしていると、
「だから、もう心配しないで」という言葉が心をよぎった。
「心配しないで?冗談じゃない。」と思った。
でも…生きてるよ?
そういえば、キリスト教ではそう教わっていたなぁ。
あぁそうか、うん、そうだった。
そして、起きてこれを書いている。日曜日の朝。
「生きてるよ」。