キーホルダー ―ライオンさんのこと 29

慣れない教会の、混みあったホールでお昼ごはんを食べていた。

まだ誰も、よく知らない。

気が付くと、目の前に知らないご婦人が座っていた。

初めて今の教会に来た時に、受付をしていた人だ。

 

周りの人との会話から、宝石、アクセサリーの類いのデザインの仕事をしているということだった。

 

話を聞いている内に、頭の中に、何時の日か思った事が蘇った。

 

私はアクセサリーが作りたかった。

ライオンさんの遺留品として、唯一警察から手渡されたアパートの鍵。8年も前、私が100円均一で買ってあげた、さくらんぼのキーホルダ―。

⇒ 参照ページ「涙雨」

 

もう、さくらんぼの部分も無くなってしまっている。わずかに残ったパーツから、かつてのことを思い出した。

警察の方によって、差し出されたこの壊れたキーホルダーを、あの日とっさに受け取った。

衣服は全て警察が引取り処分してくれた。

だから、返ってきたのはこれだけだった。

最後まで、ライオンさんの旅を共にしてくれた遺品たちだ。

これを…どうにかしたかったわけだ。

これを、どうにか。

感傷的で、馬鹿なことだと思っているけど、私はそうしたかった。

キーホルダーはティッシュに包まれて返ってきた。

沈痛な面持ちの警察官の方の顔を思い返す。どんな気持ちで、せめてティッシュに包んでくれたのか分からないけれど、見る度に人の温かさを思うような気持ちになる。

目の前にご婦人が座っていた。

理由を話してみた。

「ただの百円均一の、キーホルダーの部品なのですが、私にとって大切なものなのです。

何か、身につけられるものに作り変えて頂けないでしょうか。」

すると、

「私はそういう仕事がしたかったのです。」

と引き受けて下さった。

「同じ重さでも、大きなダイヤモンドより、彼氏が拾ってプレゼントしてくれた貝殻の方が、価値がある。そこを勘違いしない人を育てるのが私達の使命だ、ということを、宝石の学校で学びました。

そのキーホルダーは、何よりも価値があるものです。」と。

予算は応相談ということで、それでお願いしてみようと思っている。

目の前にご婦人が座った。

私は神さまにこの頃文句を言ってばかりだった。

ご婦人は、思わぬ願いを引き受けてくれた。

神さまは、私が忘れた願いを覚えておられたのだ。

つなぎ合わされる時がやって来る。

少し心が明るくなった。